公立中高一貫校 合格へのアプローチ ~ 5年生で本人がするべきこと・保護者がすべきこと
受験の窓~受験のお役立ち情報をお届けします~ |
公立中高一貫校 合格へのアプローチ ~ 5年生で本人がするべきこと・保護者がすべきこと |
前回のコラムでは、おおざっぱに親御さんがどのようにお子さんと接する際に「楽しく考える」という視点を持つことにつき書きました。
そこで今回は、もう少し具体的に、私が今まで質問されたことと、それに対し親御さんができることを紹介していこうと思います。
〇読書をしていれば国語力はつくの?
保護者の方がよく口にされることのひとつに「うちの子は本当にたくさん読書をするのだけど、国語の成績はいまひとつなんです……」というものがあります。
また、「読解力を身につけさせたいので、読書をさせるのが一番ですよね!」というのも多いです。
半分は正解。
いや、半分まではいかないかもしれません。
実はただ単に読書をすれば読解力が身につくわけではないのです。
これらの多くはファンタジーや探偵ものなどの物語を対象としたものだと思います。最近は漫画を原作とし小説化したものもたくさん目にします。
これらの本を読むのは、子どもたちにとって苦ではありませんし、読むスピードも速いです。
むしろ、「こんなに本が好きだなんて、うちの子は天才なのかしら!」という気にさえなるぐらいですよね。
このような本の楽しみ方もとても大切です。
しかし、面白いから何度も読んでストーリーを覚えてしまうことはありますが、内容を細かく覚えているわけではないことも多いはず。
私が考える読書の仕方には大まかに二通りの方法があります。
「疾走読み」と「お散歩読み」。
この二通りに分けて考えます。
登場人物になりきってストーリーを駆け抜ける読書。没頭・憑依?……共感、反感
時間をかけて途中でいろいろ立ち止まる読書。周りの景色をきょろきょろ眺めながら……発見、疑問
といった具合です。
親御さんにお子さんと同じ本を同時並行して読むことをお勧めするのは、お子さんの読書中の興味や疑問、また親御さん自身の気づきを話題の種に会話をしていき、「考えながら読む」ことと「情報の整理」ができるのです。
ただし、何でもすぐに簡単に教えてあげてはいけません。
自分で調べてみることと自分で考えてみることを少しずつ習慣化してあげてくだい。
(ちなみに私の教室では、スローリーディング講座として、地図帳や図鑑、歴史の資料集などを傍らに何週間かかけて1冊の本を読む講座を行ったりしています。)
〇作文が苦手
読書感想文や適性検査に出題される難しい課題文を読んでの作文ほど子どもたちが嫌がるものはありません。
面倒くさい、時間がかかる。鉛筆は全然進まない……
そりゃ、面白くないものは書きたいとは思わない、書くことがなければ書けるわけがないですよね。
みなさんも中学生になって以降、レポート課題を書くのが楽しかったなんてことはなかったはずです。大学生になってのレポートが苦痛でしかなかった方もいると思います。
そう、子どもたちも同じなのです。
しかも、文章を書きなれていないお子さんたちには、なおのことどうすればいいかわかりませんよね。
ではどうするか。
子どもたちがアウトプットしたいことを書けばよいのです。
自分の図鑑を作ることやスポーツや音楽、習い事の自分だけのオリジナル教則本などです。
家事で忙しいときにゲームやアニメや漫画に登場するキャラクターのことをずっとしゃべり続ける。
野球のことしか頭になく、「俺はプロになるんだ!」と練習ばかり……。
こんなお子さんにこそピッタリ。
ただし、箇条書きでは効果はいまひとつ。
少しずつ説明の文章を長く書いていくように促すことをお勧めします。
また、以前書きました、読書をした上での会話を繰り返したことを文章にすることもお勧めです。
ある程度会話の中で書く内容を整理してあげればお子さんも書きやすいはず。
「この場面での〇〇は何でこんなことを言ったんだろう」なんてことをさりげなく会話するのです。
とはいえ、毎回本を読むたびの課題になると子どもたちは途端に嫌がります。
会話する中で反応が良かった本で始めてみてはいかがですか。
そのとき、親御さんも同じように文章にしてみてください。その上で互いの文章を読んでください。
上手く書けているかは会話で読書が深まっているかがカギになります。
もうひとつ。
気になった新聞記事をスクラップもお勧めです。
要旨のまとめと自分が考えたことを書くのです。
それを交換日記(古いですね……)のようにするのです。
お子さんが考えたことにダメ出しをするのではなく、それを軸にノート上の会話をするのです。
最近楽しかったことなどもおまけで書き合えば、楽しく長続きしますよ。これは高学年になってからも非常に効果的です。
ただし、親子でできるのは反抗期ではないのが条件なのです。反抗期の場合は親以外の誰かを探してみてください。
〇勉強に真剣に取り組まないのが心配
最後はこれ。
ついつい「ちゃんと勉強しなさい!」なんて口にしてしまいますよね。
でも、小さな子どもたちが真剣な顔で机に向かっているほうが、私はむしろ心配になってしまいますし、親御さんが勉強は真剣にやらなければいけないと考えていると、本人はもっと不安を感じてしまいます。
もちろん楽しくて夢中になっていることはよいことです。
しかし、ものすごい勢いで机に向かって鉛筆を走らせているのは、とにかく課題を早く終わらせるためだけに集中して、やっつけになっていることも多くあります。
実は「勉強に真剣に取り組むこと」は精神的に成長したお子さんならよいのですが、早くからその型にはめてしまうと、「真剣にやらなければいけない」という義務感が生まれてきてしまいます。
義務は果たせば解放されますから、受験をゴールと考えるならば結果を出しやすいとは言えます。
しかし、それは周りの大人がコントロールしやすいというだけで、受験が終れば「もう受かったんだからいいじゃん」となってしまうのです。
本当は他の各教科についてもいろいろとあるのですが、特によく耳にすることを中心に書いてみました。
ポイントは「楽しみながらゆっくりと」というところ。
これ、頭でわかっていてもついつい欲張って「もっともっと」になってしまいますよね。
text by吉原 功/Kou Yoshihara
プロフィール:中学、高校入試の受験指導に長く携わり、これまでに数多くの受験生を志望校へと導いている。公立中高一貫校入試の指導経験も豊富である。現在は都内において、自身の教室での指導を行っている。